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更新日 2020.1.10

任意売却物件購入はデメリットの方が多い?任意物件購入の流れを紹介

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不動産会社で普通に紹介されている物件よりも、一般的に安く買える任意売却物件

稀に、ほぼ新築に近い状態で割安な価格で売りに出されている物件があるなど、状況によってはかなりお得なお宝物件を購入できる可能性があるため、不動産を安く購入したい方の中にはあえて任意売却物件を探しているという方もいます。

また、中古住宅を買おうとして物件をいろいろ見ていくなかで、不動産会社から任意売却物件を紹介されたという人もいるかと思います。

安く買えるのにはもちろん理由があり、リスクがあります。

この記事では、任意売却物件とは?という基礎的な情報から、メリットデメリット、それを購入するときの注意点などを解説していきます。

任意売却物件とは?

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任意売却物件とは、借金の返済の為に売りに出される物件の一種です。

不動産を売却したとしても、ローンが返済できない場合、金融機関に承諾を得れば、不動産を売却することができます。

借金返済の為に売りに出される物件には任意売却物件と競売があります。

競売との違いは、任意売却は債務者が自らの意思で売却をするのに対して、競売は売却が自らの意思によらず裁判所の指示により強制的に行われる、という点です。

不動産を担保にして借りた住宅ローンや借金等が何らかの理由により返済を滞納された場合、金融機関などの債権者はその担保にした不動産を差押えして裁判所に競売の申立てをします。

ただし、競売の前に債権者と話し合いをして合意した場合には、不動産会社などの業者で一般の不動産販売と同じように物件を売却できるようになります。

この物件を任意売却物件といいます。

任意売却物件になる経緯には、下記の2種類があります。

  • 債務者(借金をしている人)から債権者へお願いする場合
  • 債権者(金融機関等)からの債務者への打診の場合

債務者は何らかの理由でローンの返済が難しくなった際に物件を売却しようと考えます。

一般的に住宅ローンの担保に入っている物件には抵当権が設定され、物件売却にはローンを全額返済して抵当権を抹消してもらう必要があります。

しかし、不動産会社から提示された査定額がローン残高より安い場合には現金で持ち出しをする必要がありますが、当然ローン返済が難しくなった債務者なので、現金の用意ができないことが多いのが現実です。

例えば、ローン残高が2000万円で、売却希望物件を不動産会社に査定してもらったところ、査定額はローン残高を下回る1500万円だったとしましょう。

その場合に債務者は500万円現金で用意しないといけませんが住宅ローンを滞納している債務者には現実的ではありません。

その際、債権者との話し合いで、売却した1500万円を全額住宅ローンの返済にあてる代わりに、500万円の返済をなしにするという合意に至ったという場合が、債務者から債権者にお願いするケースです。

もう一つは、債権者側から打診するケースです。

なぜ、お金を貸している側の債権者の方から、返済金額が少なくなる方法を打診することがあるのでしょうか?

住宅ローンが滞納されている、返済が難くなっている債務者は、債権者側から見ると、貸したお金が戻ってこないリスクの高い人になっています。

先ほどのローン残高2000万円の例で説明すると、債権者は2000万円返してもらえないよりも、500万円損してでも1500万円回収できる状態のうちに合意してしまおうという理由です。

任意売却物件は上記のような経緯で、債権者・債務者のお互いにメリットのある事から市場に出回り、中古物件の購入検討している人もとっても選択肢の一つとして購入できるようになります。

POINT

✔︎任意売却とは、借金の返済の為に売りに出される物件の一種で、債務者が自らの意思で売却をする

✔︎借金をしている人から債権者へお願いする場合と、金融機関等からの債務者への打診の場合の2種類がある

任意売却物件購入のメリットとデメリット

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なんといっても一般の中古物件と比べて任意売却物件は安く購入できるという点です。

一般的に1割~3割程度安く購入できることが多いとされています。

例えば、一般の不動産取引で2000万円の売買価格の物件の場合、任意売却物件であれば、1700万円~1900万円前後で購入することができるということです。

一方、安く買える分デメリットももちろんあります。

具体的には、

●決済までに時間がかかる場合がある

●契約が白紙解除される可能性がある

●現況渡し

●売主は瑕疵担保責任が免責になる

●売買価格の値引き交渉は難しい

●決済までに時間がかかる場合がある

それでは、それぞれを詳しくみてみましょう。

一般の中古物件の物件売買価格は売主・買主の2者の合意で決まりますが、任意売却物件の場合、債権者の同意も必要になります。

債務者が同意するだけでは取引が成立しないため、債権者との交渉に時間がかかる場合があるため、一般の不動産の購入より決済までに時間がかかる場合があります。

一般の中古不動産購入の場合、売買契約から引き渡しまで、1~2か月が一般的ですが、任意売却物件の場合、6~18か月かかる場合が多いようです。

また、売主は売買金額がいくらになっても手元にお金が残らないことが多いため、売買金額に無関心という人も少なくありません。

一般の中古物件の購入時にはほとんど考えられませんが、任意売却物件では売買契約をしてから決済・引渡し日を迎えるまでの間に、取引が白紙撤回され、その時点で取引中止となってしまうことがあります

白紙撤回される可能性が高くなるケースは2つあります。

債権者が複数いる場合と、売却額が安い場合です。

債権者が複数いる場合になぜ白紙撤回の可能性が高くなるのでしょうか?

任意売却物件で複数の債権者がいる場合、売却額を債権者同士で配分する協議が行われ、その配分額に債権者が納得しなかった場合に、債権者が抵当権を外すことを了承しません。

また、債権者は、最後の最後まで協議ができるように、任意売却の売買契約書は白紙撤回できるように特約が入っています。

他にも、売却額が安い場合に売り主が一方的に物件を売らないと言い出すケースもあります。

通常、売買契約が成立している以上、契約後の売却中止は、手付金の倍の額などの違約金の支払いが必要です。

しかし任意売却に至る売主にはもちろんそれを支払う経済的な余裕はなく、違約金を払わない前提で売却中止を申し出る可能性があります。

通常の中古不動産の売買では、物件が問題点を抱えている場合、買主がその問題点を是正することを購入条件の特約を入れることが一般的です。

例えば、境界が未確定やマンションの管理費および修繕積立金に滞納がある等は売買契約時によくある問題です。

境界が未確定の場合は、売買契約の特約で「引渡までに境界を確定しない場合は契約を解除する」というような項目を入れることがあります。

物件の掃除や管理が行き届いていない場合も多いようです。

一般の中古不動産取引の場合は、売主は瑕疵担保責任を負います。

しかし、任意売却の場合、売主は物件の瑕疵担保責任を負いません。

瑕疵担保責任とは、不動産に欠陥など瑕疵があり、しかもその瑕疵が取引上要求される通常の注意をしても気づかぬものである場合、買主が売主に対して損害賠償を請求や契約解除をできる等、売主が買主に対して責任を負うことを言います。

しかし、任意売却物件の場合、この瑕疵担保責任を負わない為、万が一物件購入後に物件に瑕疵を見つけた場合でも、買主自身の負担となります

仮に瑕疵担保責任が付いていたとしても、それを実行してもらえる可能性は低いと考えておきましょう。

そのため、一般の中古物件での売買よりも、物件購入する前に部屋の設備状況をきちんと確認をする必要があるのと、売主から設備状況確認書など物件に関する書類をもらうなどを徹底する必要があります。

公簿売買とは、登記簿謄本に記載の面積を基に売買することを言います。

「登記簿謄本に記載の面積なら正確で問題ないんじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、登記簿謄本の面積は、実測面積と異なる場合があるんです。

そのため通常の中古物件売買では、実測面積と異なる可能性が高い場合、売買契約と引渡までの間に実測を行い、その差について引渡時に精算することがあります。

公簿売却物件では、この売買契約後の精算が現実的ではないため、たとえ実測面積と異なっていたとしても、後から精算が発生しないように公簿面積によって面積を確定し契約を行います。

最悪の場合、購入後に購入した土地の面積より実際は狭かった、ということが起こる可能性があります。

任意売却物件は債権者が借金の内少しでも多くの金額を回収することが目的なので、債権者はできるだけ債権額に近い金額で売却しようとします

通常の中古住宅売買では売り主が値引き交渉に応じてくれるケースは珍しくありませんが、任意売却では売却金額が減る=債権者の損が増えるということを意味する為、値引き交渉ができる可能性は現実的に考えると厳しいです。

POINT

✔︎中古不動産の売買が1~2ヶ月しかかからないのに対して、任意売却物件の場合だと6~18ヶ月かかる場合がかかる

✔︎白紙撤回される可能性が高くなるのは、債権者が複数いる場合と、売却額が安い場合

✔︎任意売却では値引き交渉ができる可能性は現実的に考えると厳しい

任意売却物件購入は住宅ローンを利用できるかどうか

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中古物件購入の際に、自己資金のみで購入される方は少数派の為、住宅ローンの利用を検討される方が多いと思います。

特に、住宅ローンの返済が難しいなどの特殊な理由で売却されている任意売却物件でも住宅ローンを組めるのか心配される方もいますよね。

でも安心して下さい、任意売却物件でも住宅ローンを利用することができます

もちろん、債権者である金融機関も任意売却物件のリスクを理解しているため、取り扱い金融機関が通常の中古物件取引より少なくなる点や、審査は通常よりも厳しく行われます。

余裕を持って手続きを進めたい場合は事前に金融機関で仮審査などの手続きを進めておく必要があるので注意が必要です。

POINT

✔︎取り扱い金融機関が通常より少なくなる点や、審査は通常よりも厳しく行われるが、住宅ローンを利用することはできる

任意売却購入際の費用

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一般の中古物件取引でかかる諸費用と変わりません。

総額で物件価格の6%~10%が一般的と言われています。

例えば2000万円の物件を購入した場合は、120万円~200万円前後になります。

諸費用の内訳としては、

任意売却購入の際の費用

✔︎売買契約書に貼付する印紙代

✔︎不動産取得税

✔︎登録免許税

✔︎不動産仲介業者に支払う仲介手数料

✔︎火災保険などの保険料

✔︎融資事務手数料(住宅ローンを利用した場合)

等があります。

この中で、仲介手数料や融資事務手数料は、不動産会社や金融機関によって多少前後するので、手数料が安いところを選ぶことで節約が可能です。

火災保険などの保険料も、物件購入で出費がかさむ初年度は、保証内容を最低限にして、また契約期間も1年契約にするなどで、支払い総額を抑えることが可能です。

POINT

✔︎不動産会社や金融機関で、手数料が安いところを選ぶことで、節約が可能になる

任意売却購入の流れ

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実際に任意売却物件の購入の流れを見てみましょう。

通常の中古物件購入の手続きとほぼ同じ流れのため、購入者としては任意売却物件だからと特別な手続きをする必要はありません。

気にする部分ではないかもしれませんが、物件内覧の際に通常の中古物件の場合は、不動産業者のみの立ち合いで行われることも多いですが、任意売却物件の内覧は必ず売主の方が立ち会うことになっています。

  • 物件の予算を決める
  • 任意売却を専門に扱う業者・サイトで物件を探す
  • 物件内覧・現地視察
  • 売買価格・引き渡し条件の交渉
  • 買付証書の提出
  • 売買契約の締結
  • 物件の引き渡し

任意売却を購入する際の注意点

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任意売却物件の購入の際には、通常の中古物件購入にはない注意点がいくつかあります。

大きくは、

  • 滞納金の洗い出し
  • 任差し押さえの取り消し意売却を専門に扱う業者・サイトで物件を探す
  • 競売の取り下げ
  • 手付金の取り扱い
  • 滞納金の負担の可能性

です。

任意売却物件購入を検討されている方には一番気になる部分かと思いますので、それぞれの項目を詳しく見ていきましょう。

住宅ローン以外でも、税金や消費者金融など他の債務の支払いが滞っている場合、住宅の差押えをされて競売にかけられる恐れがあります。

競売には法的拘束力があり、任意売却の売買契約後でも契約が無効になってしまいます。

まず債務者のすべての滞納している債務の確認をしましょう。

ただ、物件売却者本人に直接そのような確認を取るのは難しいのが現実です。

もし売却者の様子で不安を感じる部分がある場合には、不動産業者を通じて確認してもらうことも可能ですので一度相談してみましょう。

すでに物件が差し押さえられている場合、債権者と交渉し差し押さえの取り消しをしてもらう必要があります。

こちらも不動産業者を通じても可能ですので、差し押さえの有無の確認と同時に不動産業者に相談してみるのをおすすめします。

一般的に住宅ローンの滞納を放置していると裁判所で競売の手続きが進められてしまいます

しかも競売は、住宅ローンの滞納者の住宅を裁判所が強制的に売却して、売却金をローンの返済に充てさせる強制執行のため法的拘束力があります。

任意売却と同時に行われた場合、競売が優先されるため、売主が競売の取下げをしていないと任意売却の交渉中に住宅が差し押さえられてしまい、売買契約後でも売却が白紙撤回になる恐れがあります。

大抵の不動産業者は事前に確認を取ってくれますが、不動産業者が任意売却の手続きに慣れていないと確認漏れをしている可能性もあるので、念のため交渉時に不動産会社へ競売取り下げの手続きは完了しているか確認しておくのがおすすめです。

任意売却物件の売買の場合、売主が特殊な状況にあるため、後々のトラブルに発展する可能性を避けるために手付金の取り扱いには注意が必要です。

通常の不動産取引では、売買契約のタイミングで、一般的に物件の売買価格の10%程度の手付金を売主に支払い、その後引き渡し時に残額を全額支払います。

手付金の本来の性質は、売買契約後に買主側の理由でやっぱり物件を買わないとなった場合に、売主側への保証金の意味で支払われるものです。

しかし、任意売却物件の売主は住宅ローンの滞納をしている状態のため、経済的に厳しく、また複数の債務を滞納している人も少なくありません。

その場合、精神的に不安定な状態である場合もあり、売買契約時に売主に渡す手付金を使い込んだり、持ち逃げされる可能性があります。

また任意売却物件の状況によっては、引き渡し時の全額一括支払いも可能ですので、気になる方は不動産会社に相談してみましょう。

中古マンションの場合、戸建てにはない、管理費・修繕積立金などの費用が毎月必要です。

中古マンションの任意売却物件の場合、売主は住宅ローンを滞納するような経済的に厳しい状況のため、管理費・修繕積立金も滞納しているケースが珍しくありません

他にもマンションに併設の駐車場、駐輪場などを売主が借りていた場合の賃料も同様です。

このようなもろもろの滞納額を買主が負担して、精算することが物件売却の条件となることが多いため、購入時の資金計画に入れておく必要があります。

POINT

✔︎他の債務の支払いが滞っている場合、住宅の差押えをされて競売にかけられる恐れがある

✔︎交渉時に不動産会社へ競売取り下げの手続きは完了しているか確認しておくのがおすすめ

✔︎購入時に滞納金を負担する可能性があるので計画的に資金計画に入れておく

まとめ

ここまで任意売却物件の基本的なことから、実際に交渉や売買契約する際の具体的な注意点まで、見てきました。

ほとんどの人が一生に何度もないであろう住宅購入という大きな決断の際に、『すこしでもお得な価格で物件を買いたい』

『物件選びで住んだ後に後悔したくない』

と思うのは当然だと思います。

本記事でも紹介したように、任意売却物件はメリットに伴う、デメリットやリスクが多いです。

デメリットやリスクをしっかりと理解して、住宅購入や投資用物件の購入を検討してみてはいかがでしょうか。